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2016年度 代表委員挨拶

 2016年度、新たに美術史学会代表委員に選出されるに当たり、ご挨拶を兼ね、現状と抱負を述べたいと思います。

 美術史学会は1949年(昭和24年)6月に201名の会員をもって設立されました。現状は、2016年5月に筑波大学にて開催された第69回全国大会総会におきまして報告された会員数、2443名です。この60数年間に12倍にも増加した会員数は、我が国における美術史研究の隆盛を如実に示しています。
 美術史学会は、美術史研究活動の推進に努めることを目的としていることをここに改めて確認しておかなければなりません。

 学会の運営は、東西二つの支部におかれた常任委員会(東支部常任委員会18名、西支部常任委員会12名)によって行われ、年一回の全国大会、東西それぞれ年5回の例会、および東西支部が担当する支部大会、またその年ごとの関連行事の共催・後援を行っております。故辻佐保子 お茶の水女子大学・名古屋大学名誉教授が美術史学会に対して行った遺贈金を基金化してできた辻佐保子美術史学振興基金による外国人研究者の招聘も行われています。
 以上の活動および口頭発表の成果は、学会誌である『美術史』に集約されます。『美術史』は、編集委員および外部査読者による厳正なる査読を経た投稿論文をもとに、年二回発行されます。さらにその年ごとに『美術史』に掲載された論文の中から、論文賞委員によって、毎年最も優れた論文として選ばれた1-3編ほどの論文が美術史論文賞として表彰されます。
 現在、過去に論文賞を受賞した論文20編が英文美術史刊行委員会によってArt History in Japanとして、シンガポール大学出版、コロンビア大学出版、および東京大学出版会から世界に向けて英語で出版される計画が進行中です。これは、我が国の豊富な美術遺産および美術史研究の優れた成果を世界に向けて発信することを目的としたものです。個々の研究者の努力だけでなく、学会には世界へ向けて日本の文化や研究現状を伝える努力をより積極的に行う責務があると判断したことからこの計画が始まりました。一刻も早い出版が待たれているところです。
 さらに外部関連の委員として、美学会を始めとして芸術に関わる諸学会との共同事業を担当する藝術学関連学会連合の委員、および国際美術史学会(CIHA)との協働を担当する国際美術史学会関連の委員、さらに東洋学・アジア研究連絡協議会を担当する委員がおります。

 以上のように、研究発表及び出版の機会を提供し、各大学・研究所のみならず各美術館・博物館との協力、関連学会との連携を行い、また国際化に努めるこれらすべての企画・行事などは、初めに述べました美術史研究活動の推進という美術史学会の目的に適うものであります。
 科学研究費に関し申しあげますならば、これまでの科研費の応募件数および採択数を増す会員の皆様の努力は、大変重要な貢献でした。現状の科研費の「系・分野・分科・細目表」では、分科「芸術学」の中で細目「美術史」が単独で維持されており、この枠組みの中で一層の努力が必要であると考えております。

 しかしながら、現在学会には幾つかの問題・懸案があることは事実です。列挙するならば、学会員の数が頭打ちであり、むしろわずかながらも減少に転じてきていること、また学会費の納入率が下がっていること、学会常任委員の選出のための選挙への投票率が低すぎることなどの問題が上げられます。さらに年一度の全国大会を引き受ける大学を確保すること、それらの全国大会主催校の負担、本部事務局・東西事務局の日常業務負担の軽減も大きな問題です。これらの問題には、学会事務局の運営事務量の軽減が不可欠であり、事務および連絡のIT化も一つの解決策であると考えられます。が、しかしこのためには学会支援センターとの協力関係の見直し、常任委員各位ならびに会員個人個人のご理解・ご協力が是非とも必要です。

 最後に、これまで東日本大震災に対する学会の対応を検討し、地震被災地域会員の学会費の免除の措置、同被災地に於ける美術品の保全に関する活動に協力して参りましたことをご報告するとともに、2016年4月に起こりました熊本地震に対しても被災地域の会員の学会費免除などの措置を講じていく所存です。

 美術史学会は、美術史研究活動に邁進するための環境整備に努めて参ります。学会員の皆様のご協力・ご支援を賜りたく、ここに謹んでお願い申しあげます。

2016年9月
遠山公一       
美術史学会代表委員

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