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2018年度 代表委員挨拶

 2018年度、新たに美術史学会代表委員に選出されるに当たり、ご挨拶を兼ね、現状と抱負を述べたいと思います。

 美術史学会は、美術史に関する研究活動の推進に努めることを目的として、1949年(昭和24年)6月に201名の会員をもって設立されました。現状は、2018年5月に東北大学で開催された第71回全国大会総会において報告された会員数で、2418名となっています。この60数年間に12倍にも増加した会員数は、我が国における美術史研究の隆盛を如実に示しています。
しかしながら、昨今の人文学全体の危機的な状況、既存の枠組みが行き詰まりを見せる美術史学の現状を鑑みるならば、我々の学問も安穏と現状に満足しているわけにはいかない、そのような感覚を共有されている会員の方々も多いのではないかと思います。美術史学会もまた、良き伝統を守りつつも、新しい方向に思い切って踏み出さねばならない時期に来ていると言えましょう。

 学会の運営は、東西二つの支部におかれた常任委員会(東支部常任委員会18名、西支部常任委員会12名)によって行われ、年一回の全国大会、東西それぞれ年5回の例会、および東西支部が担当する支部大会、またその年ごとの関連行事の共催・後援を行っております。故辻佐保子 お茶の水女子大学・名古屋大学名誉教授が美術史学会に対して行った遺贈金を基金化してできた、辻佐保子美術史学振興基金による外国人研究者の招聘も行われています。
以上の活動および口頭発表の成果は、学会誌である『美術史』に集約されます。『美術史』は、編集委員および外部査読者による厳正なる査読を経た投稿論文をもとに、年二回発行されます。さらに、その年ごとに『美術史』に掲載された論文の中から、論文賞委員によって毎年最も優れた論文として選ばれた1-3編ほどの論文が、美術史論文賞として表彰されます。
現在、過去に論文賞を受賞した論文20編を、英文美術史刊行委員会によってArt History in Japanとして、シンガポール大学出版、コロンビア大学出版、および東京大学出版会から世界に向けて英語で出版する計画が進行中です。これは、我が国の豊富な美術遺産および美術史研究の優れた成果を、世界に向けて発信することを目的としたものです。個々の研究者の努力だけでなく、学会には世界へ向けて日本の文化や研究の現状を伝える努力を積極的に行う責務があると判断したことから、この計画が始まりました。一刻も早い出版が待たれます。

 さらに外部関連の委員として、美学会を始めとして芸術に関わる諸学会との共同事業を担当する藝術学関連学会連合の委員、および国際美術史学会(CIHA)との協働を担当する国際美術史学会関連の委員、さらに東洋学・アジア研究連絡協議会を担当する委員がおります。

 以上のように、研究発表及び出版の機会を提供し、各大学・研究所のみならず各美術館・博物館との協力、関連学会との連携を行い、さらに国際化の推進に努めるなど、これらすべての企画・行事は、初めに述べた美術史研究活動の推進という美術史学会の目的に適うものであります。
科学研究費に関して申し上げるならば、これまでの科研費の応募件数および採択数を増す会員の皆様の努力は、大変重要な貢献でした。現状の科研費の「系・分野・分科・細目表」では、分科「芸術学」の中で細目「美術史」が単独で維持されており、この枠組みの中で一層の努力が必要であると考えております。

 とはいえ、現在学会には幾つかの問題や懸案事項があるのも事実です。学会員の数が頭打ちであり、わずかながらも減少に転じてきていること、また学会費の納入率が下がっていること、学会常任委員選出のための選挙への投票率が低すぎることなどの問題がまず上げられます。さらには、年一度の全国大会を引き受ける大学を確保すること、それらの全国大会主催校の負担、本部事務局・東西事務局の日常業務負担の軽減も大きな問題です。学会事務局の運営事務量の軽減のためには、事務および連絡のIT化も一つの解決策であると考え、現在、紙媒体から電子メールを用いた通知に移行しようとしています。これらの諸問題を解決するためには、常任委員各位ならびに会員個人個人のご理解、ご協力が是非とも必要です。

 美術史学会は、美術史研究活動に邁進するための環境整備にこれからも努めて参ります。会員の皆様の充実した研究活動をサポートして行く学会、グローバル時代に世界的な視野で活動する学会、次世代の研究者を育成する刺激と魅力にあふれた学会を目指して、私も微力ながら力を尽くす覚悟です。学会員の皆様のご支援、ご協力を賜りたく、心よりお願い申し上げる次第です。

2018年9月
三浦篤        
美術史学会代表委員

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